クルマの性能は、エンジンや部品だけで決まるわけではありません。それをどう動かすかを決めているデータの側にも、まだ余地があります。ここでは、その仕組みを順に説明します。
まず、ECUチューンで何が起きるのか。おおまかな流れは、次の4段階です。
クルマが状態を測る
吸い込む空気の量、回転数、水温など、たくさんのセンサーがエンジンの状態を常に計測しています。
ECUが判断し、制御する
測った値をもとに、燃料の量や点火のタイミングを決めます。その判断の基準になっているのが制御データ(マップ)です。
エンジンが動く
決まった内容どおりに、燃料・点火・過給圧が制御されます。マップを最適化すると、力の出方が変わります。
性能が引き出される
パワー、トルク、アクセルへの反応が向上します。安全マージンは確保したまま、走りが変わります。
01 / BASICSエンジンを動かしているのは、データ
ECU(Engine Control Unit)は、エンジンを制御している小さなコンピューターです。現代のクルマには必ず載っています。
やっていることは、大づかみに言えば「測って、決めて、指示する」の繰り返しです。吸い込んだ空気の量、エンジンの回転数、水温、アクセルの踏み込み量、排気の酸素濃度。こうしたセンサーの値を1秒間に何百回も読み取り、そのつどどれだけ燃料を吹くか、いつ点火するか、ターボならどれだけ過給するかを決めて、実行しています。
この「決め方」は、あらかじめ表の形でECUの中に収められています。回転数がこれで、負荷がこれなら、燃料はこの量、点火はこのタイミング——という対応表です。これをマップと呼びます。ECUチューン(リマップ)とは、このマップを最適化する作業のことです。
ECUという装置そのものは、何も変わりません。変わるのは、その中に収められた判断の基準です。同じエンジン、同じ部品のまま、制御の中身だけを最適化する。ECUチューンが、ハードウェアを交換せずに出力を変えられるのは、このためです。
02 / WHYなぜ、純正には余力が残っているのか
ここが、ECUチューンを理解する上で肝心なところです。メーカーは、諸々の事情により、意図的に性能を抑えた状態で出荷しています。
メーカーが背負っている条件を並べると、理由が見えてきます。
- 燃料の質が世界中でバラバラ。ハイオクが安定供給される国もあれば、粗悪な燃料しか手に入らない地域もある。どこで給油しても壊れない設定にする必要がある。
- 気候が極端に違う。氷点下20度の朝も、50度に近い砂漠も、同じエンジンで走らせる。
- 整備されない個体がある。オイル交換を何年もしない車両も、現実には存在する。
- 車種ごとに排出ガス規制と燃費基準があり、各国の認証を通すため、出力より数値目標が優先される場面がある。
- 加えて、メーカーが出荷するクルマ全数の加重平均で判定される規制もあり、その数値をクリアするために、本来の出力を抑えて設定される車種もある。
- グレード間の差別化。同じエンジンを使いながら、ECUのデータだけで、意図的に出力を抑えた設定にしている場合がある。
これらを同時に満たすには、最も条件の悪いケースに合わせるしかありません。そこで確保される余裕を、一般にマージンと呼びます。日本のように燃料の質が安定し、整備水準も高い環境では、その多くが使われないまま残っています。
ECUチューンの出発点は、ここにあります。ターボ、自然吸気、スーパーチャージャーといった過給方式を問わず、実際に走る環境に合わせて、使われていない領域を引き出す。ただし、それは第一段階にすぎません。
ただし、解放するだけではない
数値を上げるだけなら、それほど難しくありません。本番はそこから先です。燃料の量、点火のタイミング、過給圧、スロットルの応答を、その車両と使い方に合わせて組み直す。トルクの谷を埋め、回転の上まで頭打ちにならないよう繋げていく。この作り込みがあって、はじめてチューニングと呼べます。
あなたのクルマには、どれだけ余力が残っているか
メーカー・車種・エンジンを選ぶだけで、Stage別の想定出力・トルク・価格がその場で分かります。
あなたのクルマを調べるStart simulation→03 / TYPESサブコン、フルコン、純正書き換えの違い
「ECUをいじる」と言っても、方法は大きく3つに分かれます。混同されやすいので、整理しておきます。
(リマップ/今回の方式)
純正ECUの書き換えは、装置を追加せず、純正の制御体系を活かしたまま、判断の基準だけを最適化する方法です。多くの車両はOBDポートに繋ぐだけで、待っている間に作業が終わります。
ただし、方式そのものよりも大事なことがあります。純正書き換えであれ、サブコンであれ、フルコンであれ、最終的に結果を決めるのは、書き込むデータの中身です。
そのデータを仕上げるためには、必要な計測設備、開発能力、そしてその開発に投じる膨大な手間と時間の差が、そのままデータの仕上がりの質の差となります。
Tuning Techniques は、長年にわたるノウハウの蓄積、充分な開発設備と能力により、一車種ごとに膨大な検証を重ねてデータを開発しています。純正書き換えという方式で、その検証済みのデータを使う。これが、確実性という点で最も理にかなった選択だと考えています。
※ ごく一部、ECU本体の取り外しや加工が必要な車種もあります。その場合は別途、脱着の工賃が発生します。日本の総代理店およびTuning Techniques本社での施工を含め、対応が可能です。
04 / SETUPベースとオプションの組み合わせ
ECUチューンは、出力の土台となる「ベースのマップ」に、走りの味付けや不要な制御の解除といった「オプション」を組み合わせて、クルマと目的に合わせて仕立てていきます。
ベースは、扱いやすさを優先して手の届きやすい仕上がりにしたものから、ハードウェアの持つポテンシャルを引き出したものまで、いくつかの段階を用意しています(いわゆる Stage 1/Stage 2 …)。控えめなベースは、各種オプションを主目的とする際の土台としても賢い選択です。必要な安全マージンは、どの段階でも確保しています。
車種によりますが、基本的には、ベースとなるマップに各種オプションを組み合わせて選択できます。あなたのクルマで選べる組み合わせは、下のシミュレーションで選択して、ご確認ください。
05 / RESULTどこが作ったデータか
ECUチューンの仕上がりを決めるのは、書き込むデータの中身です。ここで言うのは、作業をする店のことでも、車の方式のことでもありません。そのデータを開発している供給元の話です。国内外に数多くのショップがありますが、その多くは、どこかが開発したデータを書き込んでいます。作業の手順に大きな差はありません。だからこそ見るべきは、そのデータが、どこで、どう作られたか。
この点については、費用対効果のページで、金額と開発工数の関係を整理しています。